いよいよ母と過ごせる
残りの時間もあとわずか


母の口から死を受け入れた発言を聞くようになり
このあたりから本当の意味で
僕も『その時』を真剣に考えるようになった。


だから僕は母が生きているうちに
伝えたいことを伝えなければと決心した。


この日僕は母に会う前から緊張していた。


それは母の体調に関してではなく、
自分の事でだった。


それは母にこれまで一度もしたことのなかった
『好きな人がいる』というのを伝えること。


僕は30歳になる今でも
人生で彼女ができたことがない。


この当時(21歳時点で)も
彼女はいなかった。


これまでの21年間、
彼女ができた事がなかったこともあり
母と好きな人の事や
女性の話をしたことは皆無だった。


しかしこの当時、
こんな僕にも
2歳下の高校の後輩の好きな子がいた。


その子とは知り合った当時から
毎日のようにメールをして
時には電話をしたりして、
付き合ってはいなかったけれど
母が入院した時からも
ずっと支えてもらっていた。


僕にもそんな人がいる。


母が亡くなる前に
『自分にも好きな人がいること』
をきちんと伝えたいと思った。


それはノロケでも自慢でも何でもない。
ただ純粋にこれまでの人生で
そういった恋愛の話などしてこなかった僕にも
『好きな人がいるんだ、だから心配しないでね』
と安心させてあげたかったから。


そしていよいよその時を迎える。
僕は母の前で深呼吸をして



「はつみ、今日は大事な話があるんだ。2人だけの秘密にしてくれる…?」



「ん?なにかな?^^」



心拍数が上がり、
心臓がバクバクしているのが
自分でもわかった。


再度深呼吸をして


「実はオレ、好きな人がいるんだ」


「高校の後輩の子で、はつみが入院した時からもずっと支えてもらっていて」


「付き合ってはいないから誤解しないでね」


「ただの片想いだからさ」


僕は勢いに任せ、
聞かれてもいないことまで
母に話した。


すると母は驚いた感じではなく
嬉しそうに


「へ~ゆうじにも好きな人がいたのか^^」



とニタニタしながら僕を見てきた。



この時の光景は今でも覚えている。


僕は携帯を取り出し
母にその子の写真を見せた。



すると母は



「かわいい子だね^^」



そしていたずらっぽく笑いながら



「おまえには無理だ^^」



とからかってきた。



僕も笑いながら



「なんだよそれ^^」



と言い返した。




母は凄く嬉しそうだった。



僕の勝手な解釈かもしれないけれど
僕の口からこれまで一度たりともしてこなかった
恋愛の話を聞けたことが嬉しかったのだと思う。



僕もまた嬉しかった。
母とこういった照れくさい話ができて。


そして同時に元気な時にも
しておけばよかったと。


何とか母が亡くなる前に
話せてよかった。


そして僕には母にもうひとつ
伝えておきたいことがあった。



でもそれは照れくさくて
また『できればまだ言いたくない事』
でもあった。


なのでこの日は言わず
明日にしようと決めた。


これは母が亡くなる3日前の話。


母が亡くなるまであと2日。


翌日、僕は泣きながら母にある想いを伝える。









闘病記ランキング
↑↑ ポチっとそれぞれクリックお願いします