取り乱した母。
その姿にショックを受ける僕。


告知を受けた前日は
こんな姿では無かったのに


一体母に何があったのか、
聞くのが怖かったけれど


僕は覚悟を決めて
母の担当看護師の方に


昨日の告知の時と
僕らが帰った後の
夜の様子を聞いた。


看護師の方いわく


告知を受けた母は
先生に自分の残りの時間を
尋ねた。


先生から告げられた
現実を聞いて
母は目に涙をためて、
睨むような厳しい顔をして
鼻息が荒くなり、
体が震えていたらしい。


でも隣にいた父が、そんな母の背中を
ずっとポンポンと優しく叩いて
「大丈夫だから、大丈夫だから」と
ずっと声をかけ
励ましていたらしい。


僕はそんな両親の姿を想像して
涙が溢れた。


本当に両親は深い所で
愛し合っているのだ。


僕もその場にいたかった。
いなければいけなかった。


一緒に傷つきたかった。
そばにいてあげたかった。


看護師の方もその時の光景を
思い出したのか、目に涙を貯めていた。


そして看護師の方は
目に涙を貯めながら
穏やかな顔をして


「素敵なご両親をお持ちですね」
と声をかけてくれた。


僕はその言葉にお礼を言うとともに
下を向きながらさらに泣いた。


そして話は僕がもっとも
知りたいと思っていた核心に迫った。


そうそれは
僕らが帰った後の母の様子だ。


「今日は帰らないでほしいな…」


「ずっとそばにいてほしいな…」


心の叫びを僕に断られた母は
一体どんな様子だったのか。


僕は息を呑みながら
看護師の方の話に耳を傾けた。


母は夜中、寝れないとのことで
気分転換を兼ねて、車椅子に乗せてもらい
病院内にある中庭のような所に
連れて行ってもらったらしい。


そしてそこで母は
全力で


「あーーーーーーー!」


と叫んだらしい。



これははつみの心の叫びだったのだ。
突然突き付けられた残酷な現実に対する心の叫び。


家族である僕らが支えて
あげなければいけなかったのに。
母はあの夜1人で過ごした。



それを聞いて僕は


(どうして帰ってしまったのだろう)



(なんではつみのそばにいてあげなかったのだろう)



(はつみのそばにいてあげるべきだった)



(はつみと一緒に叫びたかった、はつみの心の叫びを共有してあげたかった)



と自分の犯した昨日の言動を悔いて悔いて悔いた。
そして自分を責め、自分に対して怒りが込み上げてきた。


それらが収まった時には、はつみに対する罪悪感が
込み上げてきた…。



これがあの告知の日、そこにあった真実。
僕がこの真実を知ったのは翌日だった。


ずっと母のそばにいれば
すべて共有できたのに…。



戻れるなら本当にこの日に戻りたい…。






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