父の口から予想だにしなかった言葉を聞き
僕は動揺を隠せなかった。


なぜ父は自分の病気が
癌であるとわかったのか。


その答えはすぐに父の口から
出てきた。


僕は思わず父にこう聞いた。


「え…?なんで癌だってわかったの?」


僕はもう隠すつもりはなく
僕はもう父が癌である事を知っている前提に
思わず父に質問してしまった。


リクライニングベットを上半身を上げた状態で
寝ていた父は先程看護師さんから渡された紙を見ながら
穏やかな顔とトーンで僕にこう言った。



「父ちゃんが入院する病棟が4Aだからな」


僕は父の言っている言葉の意味がわからず
何も返事ができず黙ったままだった。


すると父はこう続けた。


「4Aは母ちゃんが最期に亡くなった病棟だ。4Aは癌病棟だからな^^」


僕はこの瞬間
一気に感情が爆発した。


父の口から予想だにしなかった言葉を聞いて
気が動転したのもある。


だがそれ以上に父の言葉を聞いたことで
母が最期に亡くなった、あの辛くて悲しい最期の10日間ぐらいが
走馬灯のように僕の頭の中を駆け巡った。


そして僕は寝ている父の左横に椅子を置いて
座っていたが思わず体の向きを瞬時に変えた。


足元側のそして左側を向き、
零れ落ちる涙を父に見られないように
そして声を出さないように
必死に、必死に堪えようとした。


(なんでだよ…なんでまたあそこに行かなくちゃいけないんだよ…)



この時の僕は父がもう生きたまま
家に帰って来る事は無いのだろうと思っていたので


(また…またあそこで信ちゃんを看取らなければならないのかよ…)


半ば僕はやり場のない怒りをぶつけながら
突き付けられた現実を受け入れられず
悔し泣きをしていた。


そしてそんな自分を落ち着かせようと
体の向きは変えず自分の右手を
ベットに寝ている父の左手を探し出し
見つけると何度も何度も
父の左手の甲にポン、ポンと優しく叩いた。


父の手に触れるのは
何年ぶりだろう。


しかも自分から。



そして次第に


(大丈夫、信ちゃんにはおれがついているからね)


(おれがしっかりと信ちゃんの事を看取るからね)


と泣きながらも
父にエールを送り続けた。


でも一番は父の手をポンポンすることで
自分の気持ちを落ち着かせようと必死だった。

父はこの間、僕が泣き止むまで
何もしゃべらず、僕の気が済むまで
手をポンポンさせてくれた。


父の優しさが
心に伝わって来た。



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