父の母に対する感謝の想いを聞いてから
しばらくすると僕はまた冷静さを取り戻した。


その間、父と今日のこの後の僕の取るべき行動を
2人で相談した。


家に帰ったら病院に持って来て欲しいものを
父から聞き、あらかじめ入院を予想していたので
カバン忍ばせていたペンとメモ帳を取り出し
メモを取った。


また父に任せっきりだったご飯の研ぎ方を
改めて聞いた。


母が亡くなってからしばらくはご飯を研いでいたが
僕が就職して、はたまた父が定年退職してからは
父が朝晩のご飯を研いでくれていて、
そしてそんな父にすっかり甘えてしまっていたので
僕は数年ぶりに自分でご飯を研ごうと思った。


最もこのまま父は入院しもう家に帰れることは無いだろうと
この当時本気で思っていたので、
今日から自分がやらなければと思ったから。


しかし今日はこの後のスケジュールが読めないし、わからないので
父から「今日は外食しな」と言われた為、
僕は父の言葉に従うことにした。


こんな風に父と僕は平穏な時間を過ごしていた。
するとそこに看護師さんがやってきた。


看護師さんは父に1枚の紙を渡した。
僕はこの時、父が持つ紙を覗き込まなかった。


どうやらようやく病室の用意ができたらしい。
また移動の準備ができたら声をかけに来ます、と言い残し
看護師さんは去っていった。


少しの間だけ父と平穏な時間を過ごせていた分
また辛い現実に呼び戻された感覚だった。


そして僕はまた父に癌の疑いがあることを
気づかれないようにと気を引き締めようとした。


本当は言いたくて、
父と共有したくて仕方がなかったが。


でもそれはあくまで僕の勝手な主張であり
父の事を考えていない事だったので
時が来るまで心にしまっておこうと思っていた。


僕は色んな感情を抱え
また父の前で勤めて明るく振舞おうとした。


父の目を見て




「病室が決まってこれでようやくゆっくりできるね!」




すると…



父から




予想だにもしない言葉が返って来た。







「癌だな^^」




僕は今でも覚えている。



あの父の穏やかな顔と




穏やかなトーンで発した
この言葉を。



そして父から予想だにしなかった言葉を聞き
目に涙を溜め、自分の声が裏返ったのを…。



「え…?」



僕は激しく動揺した。




なぜ父が自分が
癌だとわかったのかと。



僕は今日先生から
父に癌の疑いがあると聞いてから
ずっと父の前では明るく振舞ってきたつもりであったし


僕自身も決して「癌」というワードを
発しなかったし、発したくもなかったので
父の前で匂わせるような発言もしていない。


父の口からまた母の名前を
聞くこととなる。






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