意気揚々と花火大会会場へと向かう父。
そんな父に面を食らったものの
すぐに僕は嬉しい気持ちで一杯になった。


言葉にしなくても
僕は父と、父は僕と一緒に見に行くのだと
以心伝心ではないけれど
お互いがそう思い合えた事が嬉しくて。


僕も父と深い所で
しっかりと繋がっているのだと
実感できたから。


僕は父のすぐ後ろを歩いた。
昔からそうだった。


大人になり歩くスピードが父より早くなっても
父と一緒に出掛ける時は
何故か無意識に父のすぐ後ろを歩く。


花火大会会場へと向かう道中、
僕は父に素朴な疑問をぶつけた。


前を歩く父の背中越しに僕は
父に問いかけた。


「信ちゃん全然花火を見に行く感じがしなかったのにどうしたの?」


すると父は


「生きているうちに見れるのもこれが最後かもしれないからな」


とさらりと言ってきた。


父はこの時はまだ元気だった。
でも数年ぶりに開催された花火大会。
次回はまた数年後の開催になるだろう。


だからこそ父は純粋に
こう思ったのだろう。


僕は父からの予想だにしなかった返答に
思わず息を呑み、その場に一瞬立ち尽くした。


そして母のあの時の言葉を思い出した。
そうそれは母の


「私になにかあったらこの写真を遺影にしてね」


という言葉。


当時の僕は母のその言葉を真に受けず
軽く流し、母に返答した。


僕はこの時の自分の母への返答を
ずっと後悔して生きてきた。


それと同時にこれを教訓としてきた。
もし父から同じような事を言われた時は
はぐらかさずしっかりと受け止めようと。


母を失ったことで母にできなかった事
後悔している事を父との残りの時間で
しっかりと生かそうと僕はずっと思って生きてきた。


だからこの父からの予想だにしなかった返答に
一瞬立ち尽くしたものの、父の言葉をしっかりと
受けとめる事ができていた。


今でもはっきりとあの道中の光景は
目に焼き付いている。


僕は父の言葉を噛み締めて
深呼吸をしてまた歩を進め
背中越しの父にこう声をかけた。



「そうだね人生いつどうなるかわからないからね^^」


そして声のトーンを少し上げ
明るい声で


「信ちゃん今日は楽しもうね^^」


と言った。



この父の言葉で
僕は何というかスイッチが入った。


この父との時間を心にしっかりと残そうと。
結果、この花火大会はしっかりと心に残っている。


父とのかけがえのない思い出として。


本当にこの日父と
この花火大会を見に行けて良かった^^



しかしその一方で
父の言葉は現実となった。


この数年後
父は他界することとなる。


結局父にとってこれが
最後の花火大会となった…。







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