突然の悪夢の告知から数時間後、
今度こそ手術が終わるとのことで、
僕ら家族は先に9階の病棟に案内された。


僕は9階のロビーで、
ただただ途方に暮れていた。

重苦しい空気の為、
父も兄も誰一人口を開かなかった・・。


もうまもなく母が病室に来ると案内され、
僕ら3人は母に


「末期の癌であること」


「残り時間が残されていないこと」


を絶対に気づかれないようにしようと、
急にスイッチのようなものが入った。
それはもはや暗黙の了解であった。


看護師の方が「今からエレベーターに乗って帰ってきます」
と告げに来て、僕らは急いでエレベーター前に向かった。


僕は

(絶対にはつみにバレちゃいけない)

(普通だ!普通に迎えるんだ!)

(冷静に、冷静に!)


などと「平静を装うんだ!!!」と自分に言い聞かせ
エレベーターの階数表示を見ながら考えていた。


そして5⇒6⇒7⇒8となった時
僕の心臓はバクバクいっていた。

そして9階に着き、
エレベーターの扉が開き、
ストレッチャーが出てきて
母と目があった時

母は「ただいま~生きて帰ってきました!!」

と満面の笑みで話しかけてきた。




僕はその瞬間、自分の抑えていた感情が一気に爆発して
涙が一気に溢れてきた。



(違うよはつみ、はつみはもう死ぬんだよ、もう手遅れなんだよ)


先生から余命宣告を受けた時、
母には「人工肛門にはなるが、手術は成功した」と告げますと
先生から言われ僕らは了承した。



なので母だけは治った気でいた。


それが余計に辛くて
母は希望に満ち溢れていて、
反対に僕は絶望に堕ちていった。


あんなに嬉しそうに
太陽のような満面の笑みを見たら
余計に母が恋しくなった。

「死んでほしくない」

「生きてほしい」

「癌が治ってほしい」

「もっともっと一緒にいたい」

「親孝行したい」


僕は落ち着こうとすればするほど
涙が止まらなくなった・・。


病室に着いて、母は父と兄と話した。
2人はしっかりと冷静を装い母と話していた。

僕はカーテンの裏に隠れ、

(落ち着くんだ)

(堪えるんだ)

(はつみに気づかれないようにしなくてはいけないんだ)

など一生懸命、涙を止めようと鼻を摘まみながら
気持ちを落ち着かせようとした。

すると母が「ゆうじは?」と父と兄に聞いた。

父「あ~ゆうじは手術が終わってホッとして泣いているんだよ」

母「ゆうじ、顔が見たいからこっちへ来て」

僕はその瞬間、また一気に泣いてしまった。

母「どうした?もう終わったから大丈夫だから。先生が無事に手術終わったって聞いたろ?」

「ごめん・・。」

母「なんでおまえが謝る?」

僕は何も言えず泣きじゃくり、うつむいていた。

すると見かねた父が

「今日一日ずっと緊張しっぱなしだったから、緊張が一気にほどけたんだよ」

と母に気づかれないように、
すぐさまフォローを入れてくれた。

母はそういうことかと納得して、
僕に顔を見せてといい、

両手で僕の頬を触って

「もう大丈夫だから^^」

と言って励ましてくれた。

僕はまた泣いてしまった。

今振り返っても僕はこの日から母が亡くなって2、3ヶ月後まで
毎日、しかも一日何回も泣いていた気がする。




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